「みなづちブログ」はリンクフリーです。リンクを行う場合の許可や連絡は不要です。引用する際は、引用元の明記と該当ページへのリンクをお願いします。
同性婚訴訟が最高裁大法廷へ|高裁5違憲でも動かない日本の国会の30年

ゲイのみなづち(@minaduchi)です。
2026年3月25日、同性婚訴訟について最高裁が大法廷に審理を回付したと報じられました。裁判官15人全員による統一的な憲法判断が示される見通しです。
全国の高等裁判所で下された6件の控訴審判決のうち、5件が「同性カップルを婚姻制度から排除する現行法は違憲」と判断しました。残る1件の合憲判決ですら「このままでは憲法違反の問題が生じることが避けられない」と判決文中で述べています。
各種世論調査では同性婚への賛成が6〜7割に達しているにもかかわらず、国会は法案を一度も審議・成立させていません。法案は2019年から3度にわたり提出されてきましたが、いずれも委員会での実質的な審議に至ることなく廃案となっています。日本はG7で唯一、同性婚を法制化していない国です。
この記事では、大法廷回付の法的意味、高裁6判決の全体像、国会の不作為の構造、そして約30年にわたり関係性を隠し続けてきた当事者の経験を、一次資料に基づいて整理します。
本記事のポイント
この記事を読むと、以下のことがわかります。
- 最高裁大法廷回付の法的意味と過去の違憲判決の前例
- 高裁6判決(5違憲・1合憲)の論理と法理の深化
- 婚姻平等法案が3度提出され3度廃案になった経緯
- 約30年間の不可視化が当事者に何をもたらしたか
- 最高裁判決後に予想される制度的課題
記事を書いている人のプロフィール

- 僕はゲイ×強迫性障害
- ノンケ→バイ→ゲイに心変わりしてきた
- ゲイを自覚して20年ほど
- Instagramを中心に発信活動しているクリエイター
- 🌈 結婚する自由を、すべての人に。
30年間、嘘をつき続けた人がニュースを見た朝

ある朝、テレビの速報テロップが目に入った。約30年の月日を、3つの場面が貫いている。
避難所の毛布
あの夜、地面が揺れた。
避難所に着いた。
30年連れ添った人と並んで座った。
受付で聞かれた。
「ご関係は?」
「同居人です。」
毛布は1人1枚。
隣にいるのに、手はつなげなかった。
周りの家族は抱き合っていた。
自分たちだけが、少し離れて座った。
法事の食卓
親戚が集まる法事。
「いい人はいないの?」
何百回聞かれただろう。
「いないよ。」
何百回嘘をついただろう。
家に帰れば夕飯を作って待つ人がいた。
その名前を、一度も言えなかった。
おかずの味を褒めてくれる人のことを。
一緒にテレビを見て笑う人のことを。
ただ「いない」と言い続けた。
2026年3月、右手の指輪
テレビの速報。
「同性婚訴訟、最高裁大法廷へ」
右手の薬指を見た。
銀色の指輪。
左手にはめることはなかった。
あの人は数年前に逝った。
病室で聞かれた。
「ご家族ですか。」
「友人です。」
最期の手を握ることは許された。
でも「家族」とは名乗れなかった。
約30年分の涙が、このニュースにつながっていた。
まだ判決じゃない。
でも、最高裁が「判断する」と決めた。
なぜ今、最高裁の大法廷回付が決定的に重要なのか

2026年3月25日の大法廷回付は、同性カップルを婚姻制度から排除し続ける現行法に対し、最高裁の裁判官15人全員が統一的な憲法判断を下す場が初めて設定されたことを意味しています。
大法廷とは、最高裁の裁判官15人全員で構成される審理体です。通常の事件は5人の小法廷で審理されますが、法令の憲法適合性を判断する場合や過去の判例を変更する場合には大法廷での審理が義務付けられています。
高裁段階では6件の判決のうち5件が違憲、1件が合憲という分裂状態が生じました。この分岐を統一するためには大法廷での審理が不可欠であり、今回の回付はその手続が始まったことを示しています。報道によれば、早ければ2026年度中にも統一判断が示される見通しとされています。
そして高裁の圧倒的多数が違憲と判断しているにもかかわらず、国会は法案を一度も審議・成立させていないという現実があります。大法廷の判断は、この国会の沈黙に対する司法からの最終的な応答となる可能性を帯びているのです。
同性婚の当事者として見た「判断する」という言葉の重み

この社会で同性愛者として生きるということは、日常の至る所で「説明」か「沈黙」の選択を迫られ続ける経験の連続です。
「普通」を演じ続けた年月
職場の雑談で「休日は何してた?」と聞かれるたびに、主語を抜いたり、友人と過ごしたことにしたりと、小さな嘘を積み重ねてきた記憶があります。法事や同窓会では「結婚は?」と聞かれ、そのたびに「まあ、縁がなくて」とごまかしてきました。
本当は縁がないのではなく、法律が認めていないだけです。しかしその説明をすること自体がカミングアウトになるため、黙る以外の選択肢がありませんでした。
「普通」を演じ続けるために費やしたエネルギーは、振り返ると途方もない量でした。
速報を見たときに思ったこと
大法廷回付のニュースを見たとき、最初に浮かんだのは「逃げなかった」という感情でした。これまで何度も「最高裁はどう判断するのか」と案じてきましたが、少なくとも15人全員で正面から向き合うと決まった。それだけで、沈黙の年月が無駄ではなかったと思える瞬間がありました。
同時に頭をよぎったのは、日常の中に埋め込まれた無数の「排除の瞬間」です。年末調整の書類で配偶者欄を空白にする瞬間。保険の受取人に「友人」と書くときの躊躇。入院の付き添い書類の「ご関係」欄に、正直な答えを書けないもどかしさ。
こうした小さな制度的排除は、1つひとつは些細に見えても、何十年と積み重なれば深い傷になるのだと、このニュースを見て改めて感じました。
ただし判決が出たわけではありません。
結果はまだわからない。それでも「司法が判断の場を設定した」という事実は、長い間待ち続けてきた者にとって、小さくない意味を持っています。
同性婚訴訟と大法廷:裁判官15人の統一判断が持つ意味

同性婚訴訟にとって大法廷とは、最高裁が最終的な憲法判断を下す場です。過去の大法廷違憲判決は繰り返し国会を動かしてきました。同性婚訴訟がこの場に立つことは、国会の不作為に対する司法の最終的な応答が始まったことを意味します。
大法廷審理の法的要件
裁判所法第10条に基づき、大法廷での審理は主に2つの場合に行われます。1つは法令の憲法適合性を判断するとき、もう1つは過去の最高裁判例を変更する場合です。
今回の同性婚訴訟は、現行の民法・戸籍法が憲法に適合するかという問題であり、大法廷審理の対象となる典型的な事案といえるでしょう。大法廷には最高裁長官を含む15人の裁判官全員が参加し、判断は多数決で下されますが、少数意見も判決に明記されるため、どの裁判官がどのような立場を取ったかが公開される仕組みになっています。
過去の大法廷違憲判決が動かした国会
家族法に関わる領域では、大法廷の違憲判決が国会に法改正を促してきた前例が複数あります。
- 2008年・国籍法違憲判決:父母の婚姻を国籍取得の条件とする規定を違憲と判断し、国会が直ちに国籍法を改正した
- 2013年・非嫡出子相続分違憲決定:婚外子の法定相続分を嫡出子の半分とする民法規定を違憲と決定し、国会が速やかに民法を改正した
- 2015年・再婚禁止期間違憲判決:女性のみに6か月の再婚禁止期間を課す規定について、100日を超える部分を違憲と判断し法改正が実施された
- 2023年・特例法生殖不能要件違憲決定:性別変更の要件として生殖能力の喪失を求める規定を、身体への重大な侵襲として違憲と判断した
いずれも「国会がなかなか動かなかった問題」に対し、大法廷が憲法判断を下すことで立法的な解決が実現したという構造を共有しています。今回の同性婚訴訟が同じ経路をたどるかどうかが、最大の焦点となるのです。
高裁6判決の全体像:5件違憲、1件合憲の分岐点

ストーリーで描いた「同居人です」「友人です」と名乗らざるを得ない状況は、なぜ生じるのか。ここで押さえておきたいのは、高裁段階で6件中5件が違憲と判断したという事実が、日本の司法において極めて異例の累積であるという点です。以下の表で6件の判決を一覧にまとめます。
| 裁判所 | 判決日 | 結論 | 憲法判断の根拠 |
|---|---|---|---|
| 札幌高裁 | 2024年3月14日 | 違憲 | 24条1項・24条2項・14条1項 |
| 東京高裁(1次) | 2024年10月30日 | 違憲 | 24条2項・14条1項 |
| 福岡高裁 | 2024年12月13日 | 違憲 | 13条・14条1項・24条2項 |
| 名古屋高裁 | 2025年3月7日 | 違憲 | 14条1項・24条2項 |
| 大阪高裁 | 2025年3月25日 | 違憲 | 14条1項・24条2項 |
| 東京高裁(2次) | 2025年11月28日 | 合憲 | 立法裁量の範囲内 |
全6件で国家賠償請求は棄却されていますが、5件で「現行法は違憲」という判断が示されている点が重要です。
5件の判決は単に並列で出されたのではなく、法理が段階的に深化していった点に大きな意義があります。時系列で追いかけていきます。
違憲5判決の論理と憲法の射程
札幌高裁(2024年3月14日) が突破口を開きました。高裁として初めて憲法24条1項(婚姻の自由)の違反を認め、「両性」という文言を「両当事者」と読み替えたのです。同条の立法趣旨が家父長制の排除と個人の尊厳の保障にあることから、同性カップルにも婚姻の自由が保障されるべきだと判断しました。
この突破口をさらに押し広げたのが福岡高裁(2024年12月13日) です。高裁として初めて憲法13条(幸福追求権)の違反を認定し、パートナーと家族としての永続的な結合を形成し、法的・社会的な承認を得て生活することは「個人の人格的生存に関わる重要な法的利益」であると断定しました。札幌が「婚姻の自由」で扉を開き、福岡が「幸福追求権」で射程を拡張した形です。
そして名古屋高裁(2025年3月7日) は、別制度(パートナーシップ制度等)による「代替」の限界を正面から論じました。別制度を設けること自体が差別的な区別として機能し、性的指向のアウティングにつながる危険性があると指摘したのです。
東京高裁・1次(2024年10月30日)と大阪高裁(2025年3月25日)も、憲法14条1項と24条2項を根拠に違憲と判断しています。5件の判決が重層的に現行法の違憲性を指摘し、その論理は回を重ねるごとに深まっていきました。
唯一の合憲判決が残した矛盾
東京高裁・2次(2025年11月28日) は、6件中唯一の合憲判断を下しました。現行の婚姻制度が「生殖を前提とした結合体」を想定して構築されたものであり、その区別には合理性があるという論理です。
しかしこの論理に対しては強い批判が即座に起きました。
- 異性カップルであっても子を持たない選択をした婚姻は完全に法的保護されている
- 同性カップルだけを「自然生殖の可能性」で排除する論理は整合性を欠く
- 弁護士団体や法律専門家から判決の法理に対する批判が相次いだ
さらに注目すべきは、この合憲判決自身が判決文の中で「このままの状況が続けば、憲法13条、14条1項との関係で憲法違反の問題を生じることが避けられない」と述べている点です。この記述は、唯一の合憲判決ですら現状維持の限界を認めたものと読むことができ、事実上の警告と評価されています。
同性婚の法案があっても国会はなぜ動かなかったのか

ストーリーに描いた「いないよ」という嘘を終わらせる力を持つのは、最終的には立法府です。しかし率直に言えば、問題は「法案がなかった」ことではなく「法案があっても審議されなかった」ことにあります。
法案提出と廃案の繰り返し
同性婚を可能にする民法改正案(婚姻平等法案)は、少なくとも3度にわたり国会に提出されています。法案の中身は、婚姻成立要件に「異性又は同性」を明記し、用語を性中立化する設計で、法制化のための技術的な素地はすでに整っている状態です。
- 2019年・第198回国会:衆議院に提出されたが、委員会で審議されないまま廃案
- 2023年・第211回国会:再び提出されたが、実質的な審議に至らず
- 2025年の国会:提出され継続審議となったが、衆議院解散に伴い廃案
いずれも法案の中身が問題視されたのではなく、審議の場自体が設定されなかったという点が共通しています。弁護士会や法学者からは、高裁で違憲判決が相次いでいるにもかかわらず審議すら行わない状態は実質的な「立法不作為」であるとの批判が出されています。
世論7割賛成でも進まない構造
政府は「家族制度の根幹に関わり、慎重な検討を要する」という趣旨の答弁を繰り返してきました。しかし各種の世論調査によれば、同性婚の導入に対する賛成は全体の6〜7割に達し、若い世代では8割にも上るとされています。
世論の多数派がすでに法制化を支持しているにもかかわらず法案が審議されない背景には、委員会の運営権限を持つ与党内の慎重派の影響が指摘されています。婚姻・戸籍・親子法制・税社保など複数の省庁領域にまたがる制度改正の調整難度が高いことも一因でしょう。こうした要因が重なり、「最高裁判断まで待つ」という先送りの構造が長く続いてきたのです。
ただし、高裁5件の違憲判断と大法廷回付は、その「先送り」という選択肢を急速に狭めつつあります。最高裁が統一判断を下せば、国会はもはや「司法の判断を待つ」という論理を維持できなくなるためです。
同性婚の最高裁判決の先に何が待っているのか

最も重要な点は、最高裁で違憲判決が出たとしてもそれだけで同性婚が可能になるわけではなく、判決の先に国会による具体的な法改正が不可欠だということです。
違憲判決が出た場合の立法的義務
過去の大法廷違憲判決では、国会は比較的速やかに法改正を行ってきました。2013年の非嫡出子相続分違憲決定の後は数か月で民法が改正され、2015年の再婚禁止期間違憲判決の後も法務省が改正作業に着手しています。
同性婚の場合、改正の対象は民法の婚姻規定と戸籍法が中心になりますが、波及する制度の範囲は広くなります。
- 税制(配偶者控除・相続税の配偶者軽減措置)の適用拡大
- 社会保障(遺族年金・健康保険の被扶養者認定)への包摂
- 国際私法(外国で成立した同性婚の日本国内での扱い)の整理
- 在留資格(「日本人の配偶者等」への同性パートナーの包含)
- 嫡出推定や親子法制との調整
複数の法令にまたがる包括的な制度設計が求められることになり、政治的な意思と実務的な作業の双方が必要です。
判決後に残る実務課題
2025年には政府がDV防止法など33本の法令について同性パートナーを「事実婚」に含め得るとする行政運用の拡大を行いました。これは一定の前進ですが、婚姻制度そのもの、税制、相続、年金制度は依然として対象外のままです。
自治体レベルでは530以上の自治体がパートナーシップ制度を導入し、人口カバー率は92.5%に達しています。しかしこの制度には法的拘束力がなく、婚姻の核心的な法的効果は提供されていません。
- 相続権:法定相続人としての地位が認められない
- 配偶者控除:所得控除で最大71万円の控除枠が原則として適用されない
- 相続税の配偶者軽減措置:1億6,000万円まで非課税の枠が使えない
- 遺族年金:パートナーを亡くしても受給権が原則として認められない
- 健康保険の被扶養者認定:パートナーを扶養に入れることが原則としてできない
こうした核心的な保護が欠けたままの状態は、パートナーシップ制度の拡大だけでは解消できません。善意に依存する「お願いベース」の制度では、婚姻の代替にはなり得ないのが現実です。
よくある質問(FAQ)

この記事に関連してよく寄せられる疑問にお答えします。
まとめ:約30年の涙が、司法の頂点につながった日
2026年3月25日、最高裁が同性婚訴訟を大法廷に回付しました。この決定は、約30年にわたり法的に「他人」とされ続けてきた同性カップルに対して、司法の頂点が初めて統一的な憲法判断を下す舞台が整ったことを意味しています。高裁6件中5件の違憲判断という累積が、最高裁を統一判断へと押し上げました。
まだ判決は出ていません。勝訴が確定したわけでもない。
しかし避難所で「同居人です」と答えた夜も、食卓で「いないよ」と嘘をついた午後も、右手にしかはめられなかった指輪も、その全てがこの場所につながっています。
大法廷の統一判断が国会を動かす最終的な契機となるか、それとも司法が判断を下してもなお国会が沈黙を続けるのか。問われているのは、この国が全ての人に平等な法的保護を保障する意思を持つかどうかです。
本記事のポイントを振り返ります。
- 最高裁大法廷回付は、裁判官15人全員での統一的な憲法判断を意味する
- 高裁6件中5件が違憲と判断し、唯一の合憲判決も「このままでは違憲」と警告
- 婚姻平等法案は3度提出され3度とも審議されず廃案に
- 過去の大法廷違憲判決は国会を動かしてきた前例がある
- 判決後には民法・戸籍法の改正を含む包括的な制度設計が必要
この判断を、この国の全ての人が見届ける番です。
筆者より
ここまでお読みいただきありがとうございます。
大法廷回付という言葉が速報テロップに流れたとき、「ついに」と思った人がたくさんいたはずです。同時に「まだ判決じゃない」と自分に言い聞かせた人もいたと思います。私もその一人です。
約30年という時間は、人生の半分以上になる人もいます。その間ずっと、パートナーの存在を隠し、「友人」と名乗り、法事で「いない」と答え続けた人たちがいます。この記事がその声を少しでも届けるものであれば幸いです。
もしこの記事が参考になったら、身近な人にシェアしていただけるとうれしいです。同性婚の問題は「誰か」の問題ではなく、この社会が全ての人に平等な法的保護を保障できるかという問題です。
この記事の元になった投稿はこちら
Threadsで見る
参考資料
- 最高裁判所 裁判例検索システム
- 東京弁護士会 会長声明(2026年3月25日)
- 札幌高裁判決全文(2024年3月14日)
- 東京高裁判決全文・1次訴訟(2024年10月30日)
- 福岡高裁判決全文(2024年12月13日)
- 名古屋高裁判決全文(2025年3月7日)
- 大阪高裁判決全文(2025年3月25日)
- 東京高裁判決全文・2次訴訟(2025年11月28日)
- 衆議院議案情報(第198回国会衆法15・第211回国会衆法3)
- 国会会議録検索システム
- 渋谷区×虹色ダイバーシティ共同調査(2025年5月時点)
- Marriage For All Japan 訴訟情報
- 毎日新聞(大法廷回付報道)
- OurPlanet-TV(高裁判決整理報道)











コメントお気軽にどうぞ!