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同性婚がない日本で、密室が「素顔の場所」になっている

ゲイのみなづち(@minaduchi)です。
職場で「彼女いるの?」と聞かれたとき、何と答えるか。病院で「ご関係は?」と問われたとき、どう説明するか。
日本で同性カップルとして生きるとは、「説明」と「演技」の連続です。
そんな社会で、ある場所だけが「仮面」を外せる聖域になっています。
この記事では、ラブホテルの清掃員(ゲイ当事者)の視点から、その現実を描いていきます。
2025年11月時点で、高裁判決6件中5件が「違憲」と判断しています。世論調査では約6〜7割が同性婚に賛成しています。
それでも法律だけは変わっていません。
本記事のポイント
- 同性カップルは法的に「他人」のまま。相続権、配偶者控除、医療同意などの主要な保護の多くが欠けている
- 高裁6件中5件が「違憲」判断。最高裁の統一判断は2026年以降の見込み
- パートナーシップ制度は530自治体に拡大。しかし法的効力はない
記事を書いている人のプロフィール


- 僕はゲイ×強迫性障害
- ノンケ→バイ→ゲイに心変わりしてきた
- ゲイを自覚して20年ほど
- Instagramを中心に発信活動しているクリエイター
- 🌈 結婚する自由を、すべての人に。
「拍子抜けするほど綺麗な部屋」、同性カップルと清掃員が見た密室の時間


私はラブホテルで清掃員として働いています。そして、私自身もゲイです。
男性二人組が退出した部屋
平日の昼下がり。フロントから連絡が入りました。
「202号室、退出しました」
男性二人組のお客様だったと聞きました。
ドアノブに手をかけるとき、正直、少し身構えました。
世間には「男同士は汚す」という偏見がある。
清掃の現場でも、そういう噂話を耳にすることがあります。
ドアを開けました。
整えられた枕元
拍子抜けしました。
部屋は驚くほど綺麗だったのです。
ベッドのシーツは乱れていました。
でも、枕は二つ、並べて整えられていた。
使ったタオルは洗面台の端に畳まれていた。
ゴミ箱には、きちんとゴミが入っている。
備え付けのアメニティは、元の位置に戻されていました。
私は立ち尽くしました。
枕を見つめました。二人で並んで眠ったのだろう。
起きてから、どちらかが、あるいは二人で枕を整えたのだろう。
その何気ない所作に、彼らがこの時間をどれほど大切にしていたかが見えました。
ゲイの僕には、痛いほどわかる。
この密室だけが、彼らが「仮面」を外せる唯一の聖域だったのだと。
一歩外に出れば「友人」に戻る
ドアを一歩出れば、彼らは他人行儀な「友人」に戻らなければならないかもしれない。
電車の中で手をつなぐことはできない。
レストランで「お二人のご関係は?」と聞かれれば、言葉を濁す。
職場で「週末どうしてた?」と聞かれても、本当のことは言えない。
愛を隠すために、安くないお金を払って、この密室に来る。
そんな社会は、もう終わりにしたい。片付けをしながら、私は思いました。
僕たちが本当に欲しいのは、日陰の「隠れ場所」じゃない。
光の当たる「居場所」だ。
いつか、このドアを開けた先が自由な青空でありますように。
同性婚がない日本で「密室」が唯一の居場所になる理由


なぜ、同性カップルは密室でしか「素の自分」でいられないのでしょうか。
その背景には、日本の法制度における深刻な「空白」があります。同性カップルがどれだけ長く連れ添っても、法律上は「他人」のままであり、異性カップルなら婚姻届を出せば自動的に得られる保護の多くが、同性カップルには与えられていないのです。
法的に「他人」のままという現実
住居面では、賃貸契約時に「ご関係は?」と聞かれるたびに説明が必要になります。「同居人」として契約できても、保証人になれないケースや、オーナーの判断で断られるケースもあります。同棲を始めるという、異性カップルなら当たり前の選択が、同性カップルにとっては交渉の連続になることがあります。
医療面では、パートナーが緊急搬送されても「ご家族ですか?」と聞かれ、面会や手術同意を断られる可能性があります。日本では医療同意に関する法的整理が明確でないため、実務上は配偶者が優先的に扱われることが多いものの、同性パートナーには法的権限が保障されていません。事前に公正証書などを準備していても、病院の判断次第では通用しないこともあります。人生で最も大切な瞬間に、パートナーのそばにいられない可能性があるのです。
税・相続面では、配偶者控除(所得税最大38万円+住民税最大33万円=年間最大71万円の所得控除)が原則として適用されません。パートナーが亡くなった場合、法定相続人にはなれず、遺言がなければ遺産を受け取ることも困難です。相続税の配偶者控除(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)も原則として適用されません。数十年連れ添ったパートナーの財産を、遺族として受け取ることすら保障されていないのです。
社会保障面では、パートナーを健康保険の扶養に入れることが原則としてできません。遺族年金も原則として受給対象外です。老後の生活設計において、異性婚カップルなら当然のように享受できるセーフティネットが、同性カップルには及ばないのです。
「説明」と「演技」の日常が続く
こうした法的空白は、日常生活のあらゆる場面で「説明」と「演技」を強います。
職場で「彼女いるの?」と聞かれたとき、正直に答えるか、嘘をつくか。
結婚式に招待されたとき、パートナーを連れていくか、一人で行くか。年末年始に「実家に帰るの?」と聞かれたとき、何と答えるか。
日常の何気ない会話が、当事者にとっては「判断」の連続です。
嘘をつくことに罪悪感を覚えながらも、本当のことを言うリスクを天秤にかける。その繰り返しが、少しずつ心をすり減らしていきます。
厚生労働省の調査によると、ゲイ男性の職場カミングアウト率はわずか5.9%です。レズビアン女性は8.6%、バイセクシュアルは7.3%。つまり、9割以上の当事者が職場で「仮面」をつけて働いているのです。
その結果、密室、つまり誰にも見られない場所だけが、「素の自分」でいられる唯一の空間になってしまいます。
同性婚訴訟で高裁6件中5件が「違憲」判断、司法が発したメッセージ


こうした状況に対して、司法は明確なメッセージを発しています。
「結婚の自由をすべての人に」訴訟の経緯
2019年2月14日、同性カップル13組が「同性婚を認めない民法・戸籍法の規定は違憲だ」として、全国5つの地方裁判所で一斉に提訴しました。
バレンタインデーに提訴したのは、「愛」の日に「結婚の自由」を求めるという象徴的な意味がありました。
2021年3月、札幌地裁が初めて「法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」と判断。
これは日本の司法史上、画期的な判決でした。
その後、各地裁で判決が相次ぎ、地裁段階でも違憲または違憲状態との判断が多数を占めました。
高裁判決の状況(2025年11月時点)
控訴審では、さらに踏み込んだ判断が示されています。
2024年3月の札幌高裁は、高裁として初めて「憲法24条1項(両性条項)にも違反する」と判断しました。
憲法24条1項には「両性の合意のみに基いて」という文言がありますが、これは戦前の「家制度」を廃止し、個人の尊厳と両性の平等を確立するための規定であり、同性婚を禁じる趣旨ではないという画期的な解釈です。
2024年10月の東京高裁(1次訴訟)、12月の福岡高裁、2025年3月の名古屋高裁と大阪高裁も、いずれも「違憲」と判断しました。
特に大阪高裁は、「同性カップルを法律婚以外の制度で保護しても、憲法14条違反の状態は解消しない。むしろ新たな差別を生み出す」と指摘しています。これは、「パートナーシップ制度で十分ではないか」という議論への明確な反論です。
一方、2025年11月28日の東京高裁(2次訴訟)は、6件中唯一「合憲」と判断しました。「国会で法案が複数回出されており、立法に全く取り組んでいない状況にはない」という理由ですが、他の5件との判断の違いが浮き彫りになりました。
原告側は「悪夢のような判決。この怒りを力に変えて、最高裁では笑顔でよい判決を勝ち取りたい」と反応しています。
最高裁の統一判断へ
すべての高裁判決が出そろい、各訴訟は最高裁に上告されています。
報道によれば、早ければ2026年以降に統一判断が示される見通しです(執筆時点では時期は未確定)。
6件中5件が「違憲」。
この数字は、司法が立法府に「早く法整備を行うべきだ」と明確なメッセージを発していることを示しています。
同性婚と530自治体のパートナーシップ制度、「国にしかできないこと」がある


国の法整備が進まない中、自治体レベルではパートナーシップ制度が急速に広がっています。
制度導入自治体の拡大
2015年11月、東京都渋谷区と世田谷区が全国初のパートナーシップ制度を導入しました。
当時、「たった2つの自治体の取り組み」と見る向きもありました。
それから10年。
制度は全国に広がり、2025年5月末時点で530自治体が導入しています。人口カバー率は92.5%に達し、登録件数は9,836組。
2017年の調査開始時と比べると、導入自治体数は約88倍、登録件数は約102倍に拡大しています。
「制度のない県庁所在地・政令市」は2025年にゼロになりました。もはや「地方だから制度がない」という状況ではありません。
これは、市民社会と自治体の努力の成果です。
制度の限界:法的拘束力がないという壁
しかし、パートナーシップ制度はあくまで「自治体独自の取り組み」です。法律上の婚姻とは根本的に異なります。
パートナーシップ証明書があっても、法定相続人になることはできません。配偶者控除(年間最大71万円の所得控除)は原則として使えません。配偶者ビザは取得できません。遺族年金も原則として受給対象外です。
制度の効力はその自治体内や協定先に限定され、全国どこでも通用するわけではありません。ある市で認められた待遇が、引っ越し先の市では通用しないこともあります。
企業の福利厚生でパートナーシップ証明書が認められるケースは増えていますが、それは企業の善意に基づく対応であり、法的義務ではありません。
パートナーシップ制度は「お願いベース」の制度であり、権利として保障されたものではないのです。
大阪高裁が指摘したように、「別制度では憲法14条違反の状態は解消しない」のです。
「自治体にはできない、国にしかできないこと」
Marriage For All Japanは、こう訴えています。
「パートナーシップ制度の人口カバー率は93%になりました。都道府県単位での導入も過半数を超えました。早く議論を、そして、早く、性別関係なく結婚を認めてください。自治体にはできません。国にしかできないことです」
法的な婚姻制度の整備は、国会にしかできないことなのです。
同性婚と職場の現実:9割以上が「仮面」をつけて働いている


密室でしか素の自分でいられないという現実は、職場においても同様です。
厚労省調査が示す「見えにくい困難」
厚生労働省が2020年に初めて実施した「職場におけるダイバーシティ推進事業」調査によると、職場で誰か一人にでも自身が性的マイノリティであることを伝えている割合は、ゲイで5.9%、レズビアンで8.6%、バイセクシュアルで7.3%でした。
つまり、9割以上の当事者が職場では「仮面」をつけているのです。
カミングアウトしない理由として、「職場の人と接しづらくなると思ったから」がLGBの32.1%、トランスジェンダーの32.9%と最も多く挙げられています。
差別や偏見への恐れが、当事者を「見えない存在」にしています。
「身近にいない」という認識のギャップ
同じ調査で、シスジェンダー・異性愛者に「社内にLGBT当事者がいるか」と聞いたところ、「いないと思う」が41.4%、「わからない」が29.9%でした。
合わせて7割以上が、職場にLGBT当事者がいることを認識していません。
しかし、複数の調査によるとLGBT層は人口の8〜10%程度と推計されています。30人の職場なら、2〜3人はいる計算です。
「いない」のではなく、「見えていない」のです。
これは、当事者が「仮面」をつけることを選ばざるを得ない環境があることを示しています。
「何気ない会話」が生む圧力
職場での「何気ない会話」が、当事者にとっては大きな圧力になることがあります。
「彼女いるの?」「結婚しないの?」「週末どうしてた?」
これらの質問に、正直に答えるか、嘘をつくか。毎回、判断を迫られます。
ある当事者は「毎日、演技をしながら働いている感覚。本当の自分を出せないストレスが蓄積していく」と語っています。
職場で「仮面」を外せないからこそ、密室が「唯一の居場所」になってしまう。
この構造を変えるには、法制度の整備だけでなく、社会全体の理解が必要です。そして、その理解を後押しするのが、世論の声です。
同性婚への世論は7割が賛成、それでも法律が変わらない理由


国民の多くは、すでに同性婚を受け入れる準備ができています。
世論調査データの推移
2023年の各社世論調査では、同性婚への賛成が軒並み6〜7割に達しています。
朝日新聞調査では72%、共同通信調査では64〜71%、日本経済新聞調査では65%が賛成と回答しています。
特に若年層では圧倒的多数が賛成しており、FNN調査では20代の賛成率が91.4%に達しました。
注目すべきは、自民党支持層でも58%が賛成していることです。同性婚は、もはや「リベラル」対「保守」の対立軸では語れない問題になっています。
国際比較における日本の特異性
イプソスが2024年に実施した国際調査では、日本は同性婚への「強い反対」がわずか6%で、調査対象26カ国中最低でした(スペインと同率)。
世界全体では約40の国・地域で同性婚が法的に認められています。
G7の中では、日本以外の6カ国すべてが何らかの形で同性カップルを法的承認しています。
アジアでも、2019年に台湾がアジア初の同性婚を法制化し、2025年1月にはタイが続きました。
G7で唯一、同性カップルの法的保護を持たない国。それが日本の現状です。
政治の動きの遅さ
世論がここまで変わっているのに、なぜ法律は変わらないのでしょうか。
国会では、2019年に野党が同性婚を可能にする民法改正案を提出しましたが、審議されないまま廃案になりました。
与党・自民党内には「憲法24条の下で同性婚は容認できない」という消極姿勢が根強く残っています。
2023年のG7広島サミットを前に「LGBT理解増進法」が成立しましたが、この法律は「理解の増進」を目的としたもので、同性婚やパートナーシップに関する具体的な権利保障は盛り込まれていません。
高裁で5件の違憲判断が出ても、政府は「注視」と言い続けています。世論と政治のギャップが、浮き彫りになっています。
同性婚についてよくある質問(FAQ)
まとめ:隠れ場所じゃない、居場所が欲しい
ラブホテルの清掃員として働きながら、多くの「二人の時間」を見てきました。
男性二人組の部屋が「拍子抜けするほど綺麗だった」のは、彼らがその時間をどれほど大切にしていたかの証です。整えられた枕。畳まれたタオル。その何気ない所作に、二人の時間への敬意が見えました。
しかし、その密室が「仮面を外せる唯一の聖域」であること自体が、この社会の歪みを表しています。
高裁6件中5件が「違憲」と判断しています。世論調査では約6〜7割が同性婚に賛成しています。パートナーシップ制度は530自治体に広がっています。
それでも、同性カップルは法律上「他人」のままです。
私たちが本当に欲しいのは、日陰の「隠れ場所」じゃない。光の当たる「居場所」です。
いつか、密室のドアを開けた先が、自由な青空でありますように。
この現実を知ってください。そして、よければこの記事をシェアしてください。「知らないままの壁」を一緒に減らしていきましょう。
筆者より
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この記事で描いた「清掃員の視点」は、私自身の経験と想像を重ねたフィクションです。しかし、同性カップルが「密室でしか素の自分でいられない」という現実は、多くの当事者が日々感じていることです。
私がこの記事を書いたのは、「知らない」ことが最大の壁だと感じているからです。
同性カップルが直面する困難は、外から見えにくい。だからこそ、「身近にいない」と思われがちです。でも、職場にも、学校にも、近所にも、私たちはいます。ただ、「仮面」をつけているから見えないだけです。
実は私自身、パートナーとレストランに行ったとき、「ご友人同士ですか?」と聞かれて言葉に詰まったことがあります。小さな出来事かもしれません。でも、その「小さな説明」が積み重なることで、心はすり減っていきます。
報道では、早ければ2026年以降にも最高裁の統一判断が示される見通しとされています。司法がどう判断するかに注目が集まっていますが、最終的に法律を変えるのは国会です。
一人でも多くの方が「これは自分には関係ない問題ではない」と感じてくださることを願っています。
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参考資料
- 厚生労働省「職場におけるダイバーシティ推進事業報告書」(2020年)
- 渋谷区・虹色ダイバーシティ共同調査(2025年5月)
- Marriage For All Japan公式サイト
- 各高裁判決文要旨(札幌・東京・名古屋・福岡・大阪、2024〜2025年)
- 朝日新聞・共同通信・日本経済新聞・FNN世論調査(2023年)
- イプソスLGBT+プライドレポート(2024年)












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