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30年連れ添っても「不受理」:役所窓口で起きた同性カップルの現実

ゲイのみなづち(@minaduchi)です。
日本の役所窓口では、婚姻届を出せば通常は数分で受理されます。
必要書類が揃っていれば、職員は祝福の言葉とともに届出を受け取り、二人は法律上の夫婦になります。
でも、この「当たり前」が「当たり前でない人たち」がいます。
長く連れ添い、家族に祝福され、丁寧に準備した婚姻届でさえ、窓口で返される人たちです。
本記事のポイント
- 窓口で起きる「受理」と「不受理」の落差
- なぜ同性カップルの婚姻届は不受理になるのか(政府見解・制度構造)
- 高裁判決は「何が違憲」で、どこが割れているのか(争点を表で整理)
- 国連勧告・企業の賛同など、国内外の圧力はどこまで来ているか
- 法律が変わるまで、当事者が”今日から”取れる現実策
記事を書いている人のプロフィール


- 僕はゲイ×強迫性障害
- ノンケ→バイ→ゲイに心変わりしてきた
- ゲイを自覚して20年ほど
- Instagramを中心に発信活動しているクリエイター
- 🌈 結婚する自由を、すべての人に。
30年の覚悟が「不受理」で終わった日:市役所窓口で起きたこと


ある市役所の戸籍窓口で、私は忘れられない光景を目にしました。婚姻届を受け付ける窓口という「制度の最前線」で起きた、ある一日の出来事です。
アイロンをかけた婚姻届
その日、二人の男性が窓口にやってきました。
60代くらいでしょうか。
二人とも緊張した面持ちで、丁寧にアイロンをかけた婚姻届を差し出しました。
「今日で30年なんです」
震える声。
婚姻届には何度も書き直した跡がありました。
一文字一文字、丁寧に、でも緊張で震えながら書いたのでしょう。
「一度出したくて」
私は書類を確認しながら、心臓が締め付けられる思いでした。
「申し訳ありません。法律上、受理することができません」
そう伝えなければならないと分かっていたからです。
「分かってます。一度出したくて」
男性は静かにそう答えました。
証人欄には両家の親の署名がありました。
二人の関係を家族が認め、祝福している証です。
それでも、法律は二人を「夫婦」とは扱いません。
隣の窓口から聞こえた歓声
その時、隣の窓口から歓声が上がりました。
「昨日プロポーズされて!」
若い男女が婚姻届を提出していました。
書類確認、本人確認、そして受理。
わずか3分。
「おめでとうございます」という祝福の声。
同じ窓口で、同じ婚姻届なのに。
30年の覚悟より、1日が優先される。
不受理の紙を大切にしまった
「記念になりました」
男性はそう言って、不受理の証明書を丁寧に折りたたみ、大切そうにしまいました。
二人が帰っていく背中を見送りながら、私はカウンターの下で拳を握りしめていました。
ただの紙切れ一枚が、なぜ彼らには許されないのか。
なぜ法律は30年の愛を「夫婦」と呼ばないのか:制度の壁を解き明かす


日本では、戸籍上の性別が同じ二人の婚姻届は受理されません。
日本政府の姿勢
政府は国会答弁で、民法・戸籍法上の「夫婦」を「男である夫及び女である妻」と解し、同性カップルの婚姻届は受理できないという整理を示してきました。
ここで重要なのは、当事者の愛情や覚悟の問題ではないことです。
「窓口の担当者がどう思うか」ではなく、制度が最初から門前払いの形になっているのが核心です。
婚姻届が「不適法」とされる仕組み
民法には「同性婚を禁止する」と明記された条文はありません。
それでも運用上、同性の者同士の婚姻届は「不適法」として扱われます。
理由は単純で、「婚姻」という制度設計が、異性の者同士を前提として組まれてきたからです。
戸籍・親子・相続・社会保障など、関連制度が連動して動くため、婚姻の入口が閉じていると、他の権利も連鎖的に欠けた状態になります。
“他人”の代償:今日から始まる具体的不利益


法律上の関係が「夫婦」ではないことは、感情ではなく「損失」として積み上がります。
- 税・社会保障:法律婚に紐づく控除や扶養、遺族給付などで差が出ます(制度ごとに要件は異なり、自治体・企業対応にも差があります)
- 相続:法定相続人になれません。遺言で備えても、税制上の優遇や遺留分の問題が残ります
- 医療:緊急時の同意や面会、説明の受け方が「家族」と同等にならないケースが起こりえます(病院の運用に依存します)
ポイントは「優しい病院・理解ある会社」だと通ることがある一方で、権利として自動的には確保されていないことです。
パートナーシップ制度の到達点と限界:数字で見る


全国の自治体でパートナーシップ制度が広がり、人口カバー率は9割を超えています。
一方で、この制度は多くの場合、法律婚と同等の権利(相続・税・社会保障の中核)を付与する仕組みではありません。
象徴的な到達点として、ある自治体の集計では、2025年5月末時点で導入自治体は530、人口カバー率92.5%、証明書交付は累計9,836件と報告されています。
ここから見える現実はシンプルです。
当事者は「制度が欲しい」のではなく、生活の安全保障が欲しい。”認知”の拡大は前進ですが、”保護”の欠落は埋まっていません。
高裁6件の判決:何が「違憲」なのかを整理する


高等裁判所の判断は、雑にまとめると「5つは違憲、1つは違憲とまでは言わない」という状況です。ただし、より重要なのは「どの条文・どの論点で違憲なのか」です。
高裁判決(主要ポイント早見)
| 高裁(訴訟) | 判決日 | 違憲とした主な条文(例) | 結論の特徴 |
|---|---|---|---|
| 札幌高裁 | 2024/3/14 | 24条、14条 | 同性婚を含めた「婚姻」の保護を強く意識 |
| 東京高裁(1次) | 2024/10/30 | 14条、24条2項 | 明確に違憲判断(ただし賠償請求は棄却) |
| 福岡高裁 | 2024/12/13 | 13条、14条、24条2項 | 人格的利益・尊厳を正面から扱う |
| 名古屋高裁 | 2025/3/7 | 14条、24条2項 | 「具体的不利益が大きい一方、不利益は想定し難い」型 |
| 大阪高裁 | 2025/3/25 | 14条、24条2項 | 違憲判断で流れを補強 |
| 東京高裁(2次) | 2025/11/28 | (違憲とまでは判断せず) | 主文は控訴棄却 |
※細部は各判決で異なりますが、「同性であること」それ自体は本人の意思で選べない属性であり、制度的排除が大きな不利益を生む、という認定が共通して積み上がっています。
東京高裁2次の棄却判決が残した論点:なぜ割れたのか


2025年11月28日の東京高裁(2次)は、主文で控訴棄却としました。この判断は、「5勝1敗」の見出しだけで終わらせると、状況を誤解します。
ここで見るべきは、争点が次の2段階に分かれている点です。
- 憲法上、同性カップルにも”婚姻と同等の保護”が必要か
- その保護は”法律婚(婚姻)”という名前でなければならないのか
高裁の多くは(1)を強く肯定し、(2)についても踏み込む流れが出ています。
一方、東京2次は(2)への踏み込みを抑えた形で、「立法の領域」を広く見た、と整理できます。
この割れは、最高裁が避けて通れない論点でもあります。
国連からの勧告:日本は何を求められているか


日本は国内で議論しているだけではありません。
国連の人権メカニズムでも、同性カップルを含む権利保障について、繰り返し指摘が出ています。
- 自由権規約委員会(2022年):同性カップルがすべての権利を享受できることを求める趣旨の勧告
- 女性差別撤廃委員会(CEDAW, 2024年):同性婚の承認を含む権利保障に踏み込む勧告
これは「外圧」ではなく、国際人権の共通ルールに照らした点検です。
G7の中で日本だけが取り残されていると言われる背景には、こうした国際基準とのズレがあります。
経済界はすでに動いている:600社超の賛同が示すもの


生活上の不利益は、当事者だけの問題ではなく、企業の人材戦略にも直結します。
婚姻が前提の福利厚生(慶弔、転勤帯同、家族手当、医療・保険手続)を、企業が独自に埋めようとしても、限界が出ます。
実際に、婚姻平等を求める企業キャンペーンでは、賛同企業が600社を超える規模に広がっています。
要するに、制度の遅れは「当事者の人生の遅れ」であると同時に、社会の運用コストにもなっています。
制度が整うまでにできる現実策:法的に”他人”である間の備え


法律婚ができない間、「何もできない」わけではありません。
ただし、ここは重要な注意点があります。代替策は”婚姻の代わり”ではなく、”穴を少し埋める応急処置”です。
(一般情報です。具体の作成は弁護士・司法書士・行政書士等へ相談してください)
- 遺言:相続の入口を作る(ただし税や遺留分の問題は残る)
- 任意後見契約:判断能力低下時の代理を設計
- 公正証書(財産・同居・費用分担の合意):揉めやすい論点を見える化
- 医療同意・緊急連絡カード:病院運用に左右される場面の補助
- 生命保険の受取人設定:手続きを簡略化
- 住民票の続柄:自治体で扱いが異なるため確認
「制度がない」ことを、当事者が自己責任で埋め続けさせる社会は公正でしょうか。
このチェックリストは、社会の未整備の裏返しでもあります。
もし自分の愛が「不受理」だったら:読者への問いかけ


想像してみてください。
あなたが30年間、一人の人を愛し続けたとします。親に紹介し、祝福されました。
証人欄には両家の親が署名してくれました。アイロンをかけた婚姻届を持って市役所に行きました。
「申し訳ありません。法律上…」
隣の窓口では、昨日プロポーズされたカップルが3分で受理され、祝福されています。
あなたは、その「不受理」の紙を、どんな気持ちで受け取りますか。
「同性婚は自分には関係ない」と思う方もいるかもしれません。
でも、”婚姻届を出せば受理される”という前提そのものが、誰かにとっては成立していません。
30年の覚悟より1日が優先される社会は、本当に公正でしょうか。両親が祝福しても法律が守らない社会は、誰のための法律なのでしょうか。
まとめ:紙切れ一枚が、なぜ彼らには許されないのか
市役所の窓口で、30年連れ添った同性カップルの婚姻届が返される一方、別のカップルは3分で受理され祝福される。
この落差は、感情ではなく制度が作っています。
高裁判決は積み上がり、国連勧告も出て、企業も動いています。それでも法律が変わらない。
だからこそ今、社会が問われています。
ただの紙切れ一枚が、なぜ彼らには許されないのか。
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参考資料
- 衆議院 質問主意書・答弁書(2018年5月11日)
- 「結婚の自由をすべての人に」訴訟(Marriage For All Japan)
- CALL4(判決全文・要旨)
- 国連 自由権規約委員会(総括所見・2022年)
- 女性差別撤廃委員会(CEDAW 総括所見・2024年)
- パートナーシップ制度の集計(自治体報告・2025年5月末時点)
- イプソス「LGBT+ プライドレポート2024」












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